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脳・神経系の普遍性と多様性を生み出す進化機構の解明

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ホヤ幼生 脳胞

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 線虫から脊椎動物において、Msx/Vab-15 という共通の遺伝子が感覚神経細胞の分化に重要であることを明らかにした。Li et al., PNAS(2017)

 さらに、Msx/Vab-15 遺伝子以外にも、感覚神経細胞やその他の神経細胞の分化に 重要な役割をしている遺伝子を多数同定し、解析を行っている。

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 ホヤの中枢神経系は、幼生の中枢神経系を構成する細胞のほぼすべてが一度失われて、変態の過程で成体の中枢神経系が新規につくりだされると考えられてきたが、その実態は不明であった。そこで、蛍光タンパク質Kaedeの『UV照射すると、蛍光が緑色から赤色に変わる』という性質を利用し、変態過程における幼生の中枢神経系の追跡実験を行った。その結果、幼生の中枢神経系の大部分は変態後も維持され成体の中枢神経系を構築することを明らかにした。ホヤ幼生の中枢神経系は177個のニューロンと約250個のグリア細胞から構成されているが、変態時に幼生のニューロンのほとんどは従来の説のとおりに失われるが、グリア細胞の一種である上衣細胞が主として残り、成体の中枢神経系を再構築すること、その一部が成体のニューロンを生みだしていることを明らかにした。この結果は,上衣細胞は神経幹細胞様の性質を備えており、脊索動物の変態において成体の中枢神経系を再構築するために利用されていることを示唆している。Horie et al., Nature(2011)

  脳・神経系は進化の過程で最も複雑の変化した器官の一つです。進化の過程で脳・神経系がどのように変化してきたのかを解明することは、生物の進化を理解する上で大変重要であると考えられています。上記を解明するためには、一つのモデル生物だけでなく多種の動物を使った解析が必要であると考えられます。ホヤだけでなく、線虫、ショウジョウバエ、メダカ、ゼブラフィッシュ、マウスを用いた共同研究を行い、脳・神経系の発生プログラムがどのように進化してきたのかを明らかにし、神経細胞が作られる 仕組みの共通原理を明らかにしていきたいと考えています。

Reference

  Zhao D+, Chen S+, Horie T+, Gao Y, Bao H, Liu X.  +Equal contribution

Comparison of differentiation gene batteries for migratory mechanosensory neurons across bilaterians.

Evolution & Development in press

  Li Y+, Zhao D+, Horie T+, Chen G+, Bao H, Chen S, Liu W, Horie R, Liang T, Dong B, Feng Q, Tao Q, Liu X.  +Equal contribution

Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians.

Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 114, E6352-6360. (2017)

  Horie T*, Shinki R, Ogura Y, Kusakabe TG, Satoh N, Sasakura Y.   *Corresponding author

Ependymal cells of chordate larvae are stem-like cells that form the adult nervous system.

Nature 469, 525-528. (2011) 

  堀江 健生、笹倉 靖徳

『脊索動物ホヤの変態時にグリア細胞の一種上衣細胞が成体のニューロンを作り出す』

文部科学省委託研究開発事業 統合データベースプロジェクト

ライフサイエンス新着論文レビュー(2011年1月26日)

DOI: 10.7875/first.author.2011.020

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