Takeo Horie Lab
Graduate School of Frontier Biosciences
Osaka University
シングルセルトランスクリプトームを用いた
ニューロンの分化機構および遺伝子発現調節機構の解明
ホヤの中期尾芽胚のシングルセルトランスクリプトームのtSNEプロット解析
コントロール
Foxcの異所的発現
Asic1b>CFP
Crystallin>mCherry
Asic1b>CFP
ホヤは、頭部プラコードの起源的性質を持つ感覚神経と神経堤細胞の起源的性質を持つ感覚神経を有している。
シングルセル解析、遺伝子機能解析、胚操作実験を行い、これらがお互いに運命転換可能な似た性質を有していることを明らかにし、プラコードと神経堤細胞は共通の進化的な起源をもつことを明らかにした。 (Horie et al., Nature (2018))
TH>Kaede
Ptf1a>CFP
シングルセルトランスクリプトームの解析結果より、ドーパミン神経細胞分化に必要な転写因子Ptf1aを同定した。さらに詳細な遺伝子機能解析実験、シングルセル解析を行い、共役因子として、Meisを同定した。Ptf1aとMeisを共発現させることで、中枢神経系の細胞全てをドーパミン神経細胞に分化転換させることに成功した。
(Horie et al., Genes & Development (2018))
ホヤは受精卵から幼生に至るまでの細胞系譜が完全に明らかにされており、胚発生過程においてどの割球から脳のどの領域が発生するのか、すなわち、脳の細胞系譜が明らかにされている。つまり、ホヤを用いれば、「胚発生過程において脳がどのように作られるのか?」という問いに対し、細胞系譜に基づいて真に1細胞レベルで解明することが可能であると期待される。
これまでの研究により、ホヤの胚発生過程を通した単一細胞トランスクリプトームのデータを有しており、この情報をもとに、起源細胞からニューロンの最終分化に至るまでの遺伝子発現の変遷を胚発生過程を通して、細胞系譜に基づいて一細胞レベルで包括的に解析できるようになった。
このデータをもとにして、ホヤ幼生の中枢神経系を構成する全てのニューロンについて、遺伝子発現のプロファイル解析と徹底的な機能解析を行うことにより、起源細胞から最終分化にいたるまでのニューロンの発生・分化機構を真に一細胞レベルで解明する。
さらに、各ニューロンにおける遺伝子発現調節機構を明らかにする研究を展開する。我々はすでに個々のニューロンで発現する遺伝子群を大量に同定している。これらのデータをもとに、個々のニューロンで特異的に発現する遺伝子の発現調節機構の解析から、各ニューロンが特異的な機能を獲得するための遺伝子発現調節機構を解明する。
Reference
Paul-Chacha P*, Horie R*, Kusakabe TG , Sasakura Y, Singh M, Horie T†, Levine M†.
Neuronal identities derived by misexpression of the POU IV sensory determinant in a protoverebrate
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 119, e2118817119. (2022) *equal contributors †Corresponding authors
Horie T+*, Horie R+, Chen K+, Cao C†*, Nakagawa M, Kusakabe TG, Satoh N, Sasakura Y*, Levine M*. +Equal contribution. *Corresponding author.
Regulatory cocktail for dopaminergic neurons in a proto-vertebrate identified by whole embryo single cell transcriptomics.
Genes & Development 32, 1297-1302. (2018)
Horie R, Hazbun A, Chen K, Cao C, Levine M, Horie T*. *Corresponding author.
Shared evolutionary origin of vertebrate neural crest and cranial placodes.
Nature 560, 228-232. (2018)
「脊椎動物の神経堤細胞と頭部プラコードは進化的に共通の起源をもつ」
文部科学省委託研究開発事業 統合データベースプロジェクト
ライフサイエンス新着論文レビュー(2018年8月9日)
DOI: 10.7875/first.author.2018.073